奪い去るための日々なんて要らない。
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この小説には自傷行為に関する表現が含まれています。影響が感じられる場合は閲覧をお控えください。
また、閲覧したことで何らかの被害を蒙ったとしても、長月は一切の責任を負わないこととします。
お読みになられる方は下記の追記からどうぞ。
また、閲覧したことで何らかの被害を蒙ったとしても、長月は一切の責任を負わないこととします。
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嗚呼
手に染みつく体液の不快さに、傷口に爪を立てて、少しその苛立ちを解消する。また血が溢れ出すけれど、今度はそのままにしておくことにした。流れる様を見ていた。ずっと。
殴り続けた壁には血液が付着し、剥がれた皮膚がだらしなくこびりついていた。ああ。手はもうぐちゃぐちゃなのか。白くて綺麗だと褒められた手の面影はない。血に塗れてぬらぬらと光っている。
爪で何度も強く引っ掻いた腕は、桃色の蚯蚓腫れ。その隣で赤黒い傷跡が笑っていた。刃物を使うよりも安易で、慣れていない爪の傷口は、衣服に擦れるとちりり、と痛んだ。
ああ。痛みを待っていたのか。刃物では得られない鈍い痛み。刃物はもう痛覚を呼び起こさないから。もっとぎざぎざとしていて、もっと愚鈍な何かで切り裂きたかった。何処かにぴったりな、とても具合の良い凶器があると良い。手にして、腕を切り裂いてみたい。どんな痛みを齎すのか、試したい。
ああ。
思うほど強くないと。思うほど弱過ぎもしないと。
思うほど以上に愚かで狂っている。それがあたしだと気づいたのはやっと最近のこと。他人の言動に勝手に傷ついてそれを消化できず、狂気を外へ向けた。直ぐ近くの外界。それは自分。それはあたしの左腕。
何度も死んでしまえば良いと考えた。何度も殺して欲しいと考えた。何度か、壊した。一瞬意識が途切れ、それまでより少しだけ高いところで自分の意識を感じていた。連続している筈が並行する意識の階を一段上がっていた。そこで、カッターを軽く持ち、まるでそれが生活の一部の一つの動作であるかのように、皮膚に当て、引き抜く。深く抉れると、白い脂肪の層が顔を覗かせる。そして、ぽつり、と小さな珠が現れる。腕を強く揉むと、溢れ出し、滴るようになる。
小さな傷跡では死ぬことは叶わない。それでも、壊すことには成功している。壊すだけでは何も変わりはしないのに。
ああ。
わざと、熱湯の中へ手を入れた。でもこれは未だ慣れていない。分子の運動の激しさに、手は直ぐに湯から離れた。意識を切り離さなければ。
ああ。
ああ。
いつか死ねるのだろうか。いつか終われるのだろうか。そのいつかはいつ訪れるのだろうか。
今終わってしまえば良いのに。数分後に唐突に訪れれば良いのに。明日、消えてしまえれば良いのに。あたしが壊す部位を失う前に死ねれば良い。
ああ。結局は死ぬのが怖いのだ。ああ。結局は生きることに臆病なだけなのだ。ああ。結局は社会で生きていけない愚かなあたしが悪いのだ。ああ。あたしは生かされているだけで、本当は必要ないのだ。ああ。あたしは生きていること自体を疎まれている。ああ。あたしは、仕方なく生かされている。ああ。あたしは醜く愚かでありながら、この世界で呼吸を許されている。ああ。あたしはこの世界で堆肥にすらなれない。だから。仕方なく殺されないでいる。
ああ。
ああ。
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